日本ねじ研究協会とは?
澤会長 年頭所感
一般社団法人日本ねじ研究協会
会長 澤 俊行
新年明けましておめでとうございます。
2023年の年頭に当たり,会員の皆様にご挨拶を申し上げます。
昨年も引き続き新型コロナウイルス感染者数が上昇下降を繰り返す中、最近は第8波と言われ、再度やや上昇傾向にあるようです。しかしワクチンの5回目接種などもあり、かなり先行きには希望も持てる段階になっていると期待しています。昨年はロシアのウクライナ侵攻で戦争の暗いニュースが多く流れました。世界経済も混乱し、戦争の早期解決を願うところです。日本経済もウクライナ問題の余波を受け、さらに円安の影響でエネルギー及び食料輸入が増え極めて難しい時代を迎えています。
最近感じたいくつかの話題、1)教育、2)学位取得者数、3)世界での引用論文数、について述べさせていただきます。日本の教育に関しても、従来の「知識供与型」の教育から、「探求型」教育を入れるシステムへ変化しつつあるようです。2019年から小中学校へ、2022年からは高校にも探求型の教育を入れているようです。従来の知識供与型教育は高度成長経済社会では効果があったと言われていますが、最近の研究&技術の世界では疑問視されはじめているようで、さらに「STEM」(S:Science科学,T:Technology技術,E:Engineering工学,M:Mathematics数学)が尊重され、小学生のころより座学だけではなく自分で考えて学ぶ手法が米国をはじめ多くの国で取り入れられています。知識供与型では覚えることが主で、これに対して探求型はイノベーションに繋がりにくい欠点を克服することです。
昨年8月の中旬ごろに発表された世界の博士号取得者数では、日本は約1.5万人、米国が約6倍の9万人、中国が4倍の約6万人です(2019年)。日本では就職需要と学位取得者の待遇がよろしくないので、増加しないようです。米国と中国(人口の割には今のところ少ない)は増加傾向で、今後先端科学&技術の領域では厳しい競争が起こりそうです。8月最後の日曜日には自然科学分野の引用論文数(論文の重要性を表し、他の研究論文に引用される数)の世界的順位が公表され、日本は今まで10位以内だったのが、初めて12位に落ちました。この件はNHKの地デジ&BSで午後のニュースに1時間おきに流れされていました。解釈としては、一流国から二流国へ落ちたと感じるからだろうと思います。しかし冷静に見れば、日本の研究力&技術力の現状を考えれば、致し方ない事実です。世界で戦うには常に研究力と技術力は磨くべきだと思います。
他方、日本の国立大学は2004年の独立法人化で外部資金依存型になりました。従来の国家から分配される運営交付金(研究費用)から自分で獲得した外部資金で研究を行うようになりました。米国システムはこれを徹底しておりますが、日本システムではかなり困難な教員が多いはずです。その上、国立大学(広島大)では毎年業績評価まで行わるようになっております。米国の教員は外部資金がとれない活動には参加せず、ひたすら資金獲得のための営業と研究に集中しています。これが米国のパワーの源泉のように思えます。上述のように世間の一部の動きを紹介しましたが、世界はかなりの速度で動いている感じはします。これに対応してどんな分野でも研究力&技術力を磨き,世界での競争に身を置いておくべきと強く思います。前述の2)及び3)と最近の大学の外部資金獲得に関して、11月下旬の某新聞コラムに憂いと対策の文章が掲載されていました。
このような世間の動きがある中,我々の研究協会活動も新コロの厳しい状況をはねのけ、それなりの成果を挙げています。表彰委員会、総務委員長では当会の発展にご尽力頂いた2名の方々を名誉会員として表彰し,さらに顕著な貢献をされた会員4名を表彰しました。人材育成委員会では,ねじ大学校が設立され、9月2日に6名の入学者を迎えて入学式が行われました。高度なねじ技術者を目指し専門家育成のための講義が始まりました。研究委員会では「ねじ締結体の設計法」の改定作業を行い第2版「「ねじ締結体の設計法」を3月に刊行しました。さらに11月には対面とウェビナーによるハイブリッドなシンポジウムを開催致しました。その他の研究分野に関しても進めております。技術委員会では同じくウェビナーによる技術講演会の開催を3回行い,標準化委員会ではISO/TC2関連の規格審議に積極的に参加し、対応ISOに変更のあったJISの改正作業にも当たっております。また,出版委員会を隔月で開催し,原稿の執筆依頼,構成の検討,編集作業等を行い,毎月の会誌の発行を継続しております。
2023年がスタート致しましたが,本年の当会の活動も,各委員会活動を中心とし,新型コロナの感染状況に配慮しながら,対面での各委員会活動を検討するなど,臨機応変に対応しながら活発化を目指します。なお当面の課題の日本学術会議の協力学術研究団体の称号獲得には、ねじに関する論文集の刊行が必要で、現在準備を進めており会員皆様の投稿をお願いします。さらに必要な個人会員数100名以上ですが、現在約70名で、もう少しで基準値を超えそうです。これに対しても皆様のご協力をお願い申し上げます。
本年もわが国を代表するねじ研究団体として,本会の定款に記されているようにねじに係る研究を促進すると共に、会員の皆様に有益な情報をお届けできるよう各委員会活動の更なる活発化と発展を皆様と一丸となって目指す所存ですので,より一層のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
最後になりましたが,皆々様の益々のご健勝とご多幸を祈念して、新年の挨拶とさせて頂きます。